腎臓病(じんぞうびょう)の多くは無症状で気づかないうちに悪化します。そのため、現在の腎臓の状態と、将来、腎臓が悪くなる原因(リスク因子)を把握して、これ以上悪化させないための早いうちからの予防を行っていくことが重要です。一方、健診で腎臓病を指摘された方の多くが、医療機関を受診していないという問題も明らかになりました。そこで、現在、私たちは、全国土木建築国民健康保険組合と共同で、慢性腎臓病重症化予防プロジェクトを行っています。
腎臓病の悪化に関わるリスク因子は、高血圧、糖尿病、喫煙など、複数あり、総合的に判断することが重要です。医療者が腎臓病に関わる健診結果を見たときには、頭の中で、現在の腎臓の状態と複数のリスク因子を考慮して、対応を検討しています。
最近は、機械学習を活用した大規模なデータを分析する技術の進歩によって、病気が悪化する危険性を予測することが可能になってきました。皆様が受けられた健診結果を活用して、個人ごとに、未来の健康状態を知ることが出来れば、将来に備えた行動も可能になります。
今回、過去2年分の健診結果を用いて、複数の機械学習による解析方法1と臨床的判断2を組み合わせて、腎機能が悪化3する危険性を予測しました。危険性が高いと判断された場合に、医療機関で慢性腎臓病について相談することをお勧めしています。医療機関で腎臓病の状態をチェックすることで、腎臓に優しい生活の工夫についてアドバイスを受けることが出来ます。
私たちは、健康に関わるデータの分析によって、多くの方の健康的な生活に貢献することを目指しています。
1 ランダム・フォレスト、XGBoost、ロジスティック回帰、ニューラルネット等の複数の解析方法、もしくはその組み合わせ(アンサンブル学習)で予測する方法をとっています。
2 医学的に重要な危険因子(尿タンパク、高血圧、糖尿病)が少なくとも一つ以上あることをデータから確認しています。
3 推定腎機能(eGFR)の30%以上低下、あるいは腎不全の発生としています。