研究室でリサーチアシスタントとして頑張ってくれた岸 晃生 君が、京都大学医学部医学科を卒業して4月より初期研修医になります。研究室では厚生労働省の大規模実証事業をサポートしてくれました。また、保険者データベースの解析から論文作成まで、実践してもらいました。次のステージでは、良い医療者としての成長と活躍を応援しています。卒業報告の文章を紹介します。
【自己紹介】岸 晃生
今年3月に京都大学医学部を卒業した岸晃生です。学生時代は、病院実習が始まるまでは趣味のピアノに集中していて、コンサートを開催したりして楽しんでいました。病院実習が始まってからは、以前から関心のあった病院の中にとどまらない医療の仕組みについて考えたいと思っていました。特に産官学が関わる領域に関心があり、健康経営に取り組んでいる会社にインターンに行ったり、厚労省に見学に行ったりしていました。そのような時期に福間先生を同期に紹介してもらい、結果的に卒業まで福間研究室にお世話になることになりました。
1.研究室で何を学んだか?
大きく3点に分けて書きます。まず、自分で研究して論文執筆をすることで、研究に関わるあらゆることを学びました。先行研究を検索し、研究テーマを考えて設定し、研究デザインを考え、その手法を調べてプログラムを書いて実装し、試行錯誤を繰り返しながら論文に落とし込みました。自分で研究するまでは、研究に関する本を読んで勉強したりプログラミングの練習をしたりしている時期もありましたが、やはり直接経験しない限りは得られないものがたくさんありました。先生にサポートしていただきながら手を動かしながら考えることで、見える景色も変わり、スキルも考え方も成長できたように感じます。
また、以前から関心のあった産官学の関わり方について、イメージが深まりました。厚労省のプロジェクトに参加させていただいて議論を拝見したり、企業とのミーティングに同席させていただいたりしたのは特に良い経験です。
最後に、研究室で先生方と同じ空間にいて、直接お話ししたり研究の様子を拝見したりすることで、特に意識せずとも得られたものが多々あるように感じております。研究や仕事に対する取り組み方はもちろん、日々の過ごし方や人との関わり方など、あらゆる面で学ぶ機会にあふれていました。その中で自省することで、長期的に向かっていくvisionや自分の日々の過ごし方を振り返る機会が多々ありました。
2.学びを今後にどう活かすか?
まず、エビデンスを読み解く力がついたことは研修に直接的に役立つのではないかと期待しています。1年前であれば、システマティックレビューやRCTの結論を鵜呑みにしていたと思いますが、今は本文を批判的に読んで結論の信頼性を考える(考えようとする)ようになっています。一般にこのスキルはある程度の診療や大学院での期間を経て身につけることが多いように思うので、アドバンテージを得ているのではないかと思います。このスキルを臨床の質に活かせるよう精進したいです。
また、実臨床の中で研究テーマを考えることにも研究室での経験が大いに活きると期待しています。研究に限らず長期的に取り組みたいテーマは臨床においてアンテナを張ることで発見していくものだと思いますが、実際の研究経験はその精度を上げるはずです。臨床疑問をresearch questionに落とし込むことを例に取っても、どの臨床疑問が価値が高いか、どのようなデザインが適切か、追加で何をどのように調べるのが良いかなど、考えるポイントがたくさんありますが、各々について経験を積めたことでこれからの研究に関係する思考の質が上がっているように思います。
3.後輩に伝えたいこと
“歩きながら考える”ことをおすすめします。私は1回生の時から漠然と疫学研究や医療の仕組みに関心がありましたが、読書して自分なりに考えるだけで数年間を過ごしていました。研究室を探してお邪魔するにしても、ある程度準備してからにしたいと思っていた記憶があります。しかし、今思えばそのような”準備”はとても効率が悪かったし、景色が変わることもありませんでした。今、関心のあることがある人は、知識や技術がなくともいくつか研究室を訪ねてみるといいと思います。その中から自分で手と頭を動かせるところを選べば、学生期間をより有意義に過ごせます。皆さんのご活躍をお祈りしています。
***私から見た研究室***
1年ほど前に引っ越して研究室が広くなりました。天井が広く、黄緑とベージュを基調とした明るめの配色で心地が良いです。研究室の近くには鴨川や大文字山があり、何気ない通りにも趣があります。散歩コースには困りませんでした。そのような環境のおかげでストレスなく作業もはかどりました。国試勉強も大半は研究室で済ませたように思います。コーヒーを飲みながらなんとなく研究室でのんびりしていることもありました。やはり身体が居心地がいいと感じる環境は大切です。研究室にいらした方は、その雰囲気も感じていただければと思います。
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