当研究室では、各専門領域の臨床家が実施する様々な臨床疫学研究のサポートを行っています。
今回、当研究室の桂(研究協力員:外科)と福間が、外科領域における同じトピックの重複レビュー論文出版に関するメタ疫学研究論文を、British Journal of Surgeryに発表しました。
Katsura M, Kuriyama A, Tada M, Tsujimoto Y, Luo Y, Yamamoto K, So R, Aga M, Matsushima K, Fukuma S, Furukawa TA. High variability in results and methodological quality among overlapping systematic reviews on the same topics in surgery: a meta-epidemiological study. Br J Surg 2021 in press.
https://academic.oup.com/bjs/advance-article-abstract/doi/10.1093/bjs/znab328/6430360
近年、どの専門領域においても急速にシステマティックレビュー論文の出版数が増加しています。これまで薬剤介入試験に関する重複レビュー論文出版に関しては、industry sponsorshipの影響も考えられいくつかの研究報告がありましたが、外科領域においてはまだほとんど議論されていませんでした。
今回、外科的介入を検討したシステマティックレビュー論文(RCTのみを包含)のうちで、2015年に出版されたトピックをベンチマークとし、2011年から2015年までに同じテーマのレビュー論文がどれぐらい重複して出版されているかを調べ、それらの結果(効果量)と方法論的質の違いを評価しました。さらに、それぞれの重複レビュー論文が出版後の5年間(~2020年)でどれぐらい引用されているかを調べました。
その結果、約60%のトピックで重複レビュー論文出版を認め、一番重複数が多かったトピック(PCI vs. CABG)では、5年間で20もの重複レビュー論文が出版されていました。さらには、同じトピックのレビュー論文であっても、それぞれの論文の示す結果(効果量)や方法論的質には多様性があることも分かりました。出版後5年間の引用数にも大きな差が認められ、混合効果モデルを使用して引用件数に関連する因子を調べた結果、方法論的質が高いことが、インパクトファクターとは独立して引用数に関連していました。主なユーザーである臨床家が悩まないように、研究者やジャーナル編集者はより質の高いレビュー論文に注力すべきではないか?というメッセージとなりました。
本研究テーマは、BJS blog pageでも紹介されています。
本研究結果が、今後のレビュー論文出版に関するより良い仕組み作りへ向けて、これから新たな研究が発信されるきっかけとなればと考えています。
桂守弘