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RESEARCH: SGLT2阻害薬の新規糖尿病発症予防効果に関するシステマティックレビューとメタ解析

2022/10/12 NCD重症化予防プロジェクト お知らせ

Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors and New-onset Type 2 Diabetes in Adults with Prediabetes: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials

Yuichiro Mori, O. Kenrik Duru, MD, Katherine R. Tuttle, Shingo Fukuma, Daisuke Taura, Norio Harada, Nobuya Inagaki, Kosuke Inoue

The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2022;, dgac591,

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36217306/

糖尿病の発症予防は世界的な健康課題です。2010年代から使用されるようになった糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬は、近年になって糖尿病のみならず心不全や慢性腎疾患の進行予防効果が証明され、現在は非糖尿病患者さんにも使用されています。もともとは糖尿病治療薬ですから、非糖尿病患者さんに使用した場合には糖尿病の新規発症を予防できる可能性があります。もしそうであれば、1種類の薬剤で様々な予防効果を併せ持つことが出来ます。しかし、これまで非糖尿病患者へのSGLT2阻害薬のランダム化試験で、2次アウトカムとして糖尿病発症予防効果が検討されてきましたが、結果は一貫していませんでした。

結果が一貫しない理由として、特に予防効果の意義が大きい前糖尿病段階(今回の研究では、HbA1c 5.7-6.5)の患者さんが、個々の研究ではそこまで多くはなかった可能性が考えられます。そこで我々は、これまでに結果が公表されている、前糖尿病段階の患者さんにSGLT2阻害薬を投与したランダム化比較試験を網羅的に検索し、メタ解析を行いました。京都大学糖尿病・内分泌・栄養内科学教室、京都大学医学部社会疫学教室、UCLA、University of Washington、との共同研究です。

結果、やはりSGLT2阻害薬には全糖尿病の患者さんにおける新規糖尿病発症予防効果があるという結論が得られました。またこれまでのSGLT2阻害薬の研究と同様に、特筆すべき副作用の増加は明らかではありませんでした。ただし、本研究の対象患者さんは全員が心不全や腎不全を基礎疾患に持つ患者さんですので、より健康な(基礎疾患の少ない)患者さんでの効果は未検証であることに注意が必要です。

上記のような基礎疾患のある方は内服薬が何種類にも及ぶことが珍しくありません。そういった方の効率的かつ効果的な薬物療法を考えるうえで、既存のエビデンスを集約し、期待されていた治療効果を裏付ける知見の一つが得られたと考えられます。

 

博士課程1回生 森雄一郎

 

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