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RESEARCH: IoT×ナッジによる高齢者の健康行動変容RCT

2022/12/21 お知らせ

てくてくビーコンプロジェクトから新しい論文がJAMDAにアクセプトされました。

Yamada Y, Uchida T, Sasaki S, Taguri M, Shiose T, Ikenoue T, Fukuma S. Nudge-Based Interventions on Health Promotion Activity Among Very Old People: A Pragmatic, 2-Arm, Participant-Blinded Randomized Controlled Trial. J Am Med Dir Assoc. 2022 Dec 15:S1525-8610(22)00887-8. doi: 10.1016/j.jamda.2022.11.009.

https://www.jamda.com/article/S1525-8610(22)00887-8/fulltext#%20

「介護予防はナッジできるか」をテーマに、てくてくビーコンプロジェクトで構築したIoT環境を活用してRCTを実施した結果の報告です。

介入となるナッジメッセージは、大阪大学の佐々木周作先生に監修いただき構築しました。詳細は、佐々木先生の記事をご覧ください。

てくてくビーコンプロジェクトを実施している京都ゆうゆうの里では、平均年齢80歳を超える100名弱の高齢者が日常的にビーコンを持ち歩いています。共有スペースに設置したタブレットでは、リアルタイムに移動距離を確認することができ、3か月に一度はご本人たちにご自身の生活の振り返りに使っていただけるよう紙のレポートをお返ししています。

本研究では、てくてくビーコンプロジェクト参加高齢者を無作為に2群に分け、介入群には、レポートとタブレットを使って、タブレットの利用を促すナッジメッセージを2段階に分けて提供しました。

1段階目のナッジメッセージ: 個別にお返ししているレポートの裏面に、「●日から●日まで、てくてくタブレットで「5問連続京大クイズ」に挑戦できます。期間限定ですので、お見逃しなく」のメッセージを追加しました。(損失回避メッセージ)

2段階目のナッジメッセージ:その後1週間はどなたでも「5問連続京大クイズ」をタブレットで楽しんでいただきましたが、介入群には、追加で「次にいつてくてくタブレットを使いますか?」という質問をして、答えていただきました。(コミットメントナッジ)

介入前から、介入後16週間の日々のタブレット利用回数はこのようになりました。灰色の1週間が「介入」を行った週で、赤が介入群の平均、緑が対照群の平均です。4週ごとに点線が入っています。

介入が始まる前は、両群とも同じような利用状況です。介入週にはいると大きな差がでましたが、それはその後すぐに収束しました。しかし、数週間を過ぎたあと、コンスタントに介入群が対照群よりもタブレットを使っていたことがわかりました。

1日あたりの利用回数を4週間ごとにまとめて、群間の差をみますと、第2ピリオド、第3ピリオドにおいて介入群のほうが対照群よりも統計的に有意に多くタブレットを利用しており、この効果は主に男性参加者が牽引している様子が見えました。

本研究結果から、2段階のナッジメッセージにより高齢者は行動を変容する可能性が示唆されました。特に男性高齢者にその効果がみられたことは、掲載ジャーナルからも興味を持たれています。男性高齢者を活性化する手段はなかなか難しいのは知られており、今回の介入の何が良かったのかを探ることは、健康長寿社会を目指すうえで大変有用な知見になるかもしれません。

 

京都ゆうゆうの里のてくてくビーコンプロジェクトは、スタッフ、入居者の方々のご協力のもと、健康情報学大学院生の内田智絵さんの日々の労力と、滋賀大学の池之上先生、京都市立芸術大学の辰巳先生、京都大学博物館の塩瀬先生、株式会社GOCCOの発想力と技術力に支えられて構築されました。本介護予防ナッジ研究は、行動経済学の大阪大学 佐々木先生と生物統計学の東京医科大学 田栗先生から多大なるご支援をいただきました。ありがとうございました。

 

山田ゆかり

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