Ohnishi T, Mori Y, Fukuma S. Risk of cardiovascular disease associated with repeated proteinuria across annual kidney function screening among the middle-aged and older general population in Japan: a retrospective cohort study, BMJ Open 2023;13:e071613. doi: 10.1136/bmjopen-2023-071613
https://bmjopen.bmj.com/content/13/7/e071613.info
日本の特定健診における尿検査の異常と脳血管・心血管イベント(脳卒中・心筋梗塞など)との関連を検証した研究結果がBMJ Openに掲載されました。慢性腎臓病(CKD)の症状の一つである尿蛋白は、日本の健診では一般的な検査として実施されています。健診を毎年受診する方は多く、尿蛋白を繰り返し指摘される方も少なくありませんでした。これまで尿蛋白の量が多いと、心筋梗塞の新規発症が多いことが知られており、尿蛋白の危険性は指摘されていました。しかし、尿蛋白を何度も指摘されることと健康上の問題を調べた研究はありませんでした。そのため、以前も指摘されたから、二回目の尿蛋白は問題がないのか、以前に加えて今回も指摘されたから、二回目の尿蛋白はさらに問題なのかは分かっていませんでした。この臨床課題を科学的に検証するために本研究は実施されました。
この研究では、全国土木建築国民健康保険組合のレセプトデータおよび特定健診のデータを組み合わせて解析を行いました。2011年~2015年の間に健診を二回以上受けていた88,744名を対象に、2021年まで観察を行い(中央値5.25年)、660件の脳卒中・心筋梗塞などを観察しました。対象となった方の平均の年齢は51歳、女性が28.6%でした。BMIは23.7、eGFR78.4ml/min/m2と正常の腎機能の方が主体でした。尿蛋白は1+以上の方は4.3%に認めました。
Figure S1
尿検査が正常の方と比べて、尿蛋白を1回指摘された方は1.36倍(95%信頼区間1.07-1.72)、2回以上指摘された方は2.08倍(95%信頼区間1.67-2.57)、脳卒中・心筋梗塞などが多いことが分かりました。
Table 2. Hazard ratios for MACE as a primary outcome in the survival analyses
All-negative group |
Once-positive group |
Repetitively-positive group |
Reference |
1.36 (1.07–1.72) |
2.08 (1.67–2.59) |
脳卒中や心筋梗塞のリスクとして知られる糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙ごとにも調査しました。糖尿病のある方・ない方、高血圧のある方・ない方、脂質異常症のある方・ない方、喫煙のある方・ない方で一貫して、尿蛋白を繰り返し指摘されると、脳卒中・心筋梗塞などのリスクとなる結果でした。
今回の研究の結果は、健診の保健指導の科学的根拠として利用できます。研究の結果が腎不全への進行や脳卒中・心筋梗塞の予防につながることを研究チームは願っています。
大西剛史(客員研究員)