Effect of no cost sharing for paediatric care on healthcare usage by household income levels: regression discontinuity design.
Shingo Fukuma, Hirotaka Kato, Reo Takaku, Yusuke Tsugawa.
https://bmjopen.bmj.com/content/13/8/e071976
小児医療費補助によって子供の医療アクセス機会を確保する政策が全国の市町村で実施されています。効果的な医療費補助の仕組みを設計するには、補助によって医療利用がどの程度の影響を受けるのか、世帯の経済状況によってその影響は変わるのかについて、知ることが重要です。
本研究では、全国規模の国保組合データを利用して、集団全体また世帯年収別に、小児外来医療費補助が外来医療利用(外来受診日数、外来医療費)及び入院医療利用(入院有無、入院医療費)に与える影響を回帰不連続デザインで評価しました。
回帰不連続デザインは疑似実験デザインの一つで、疑似的なランダム化を起こす変数を用いて質の高い因果推論を可能にします。通常の分析方法では、対処が難しい未観測共通原因の影響を取り除くことが可能です。
本研究では、市町村毎に定められた特定の年齢まで小児医療費補助が行われるという状況を利用して、生年月日を割付変数、医療費補助の有無を治療変数、医療利用状況をアウトカム変数としたモデル化を行っています。
生年月日→小児外来医療費補助の対象→医療利用状況
結果として、集団全体で、外来医療費補助によって外来医療の利用は増えていました。
受診日数/年 +5.26 日
外来医療費/年 +369 ドル
一方で、入院医療の利用については差を認めませんでした。
外来受診は増えたが、入院の予防効果は検出できなかったと言えます。
また、外来医療の利用増加は高収入世帯でより顕著に認められました。
医療費補助がより必要と考えられる低収入世帯よりも、高収入世帯の方が医療費補助制度をより活用するための情報にアクセスしやすかった可能性、医療費以外の間接コストの負担が高収入世帯では相対的に低かった可能性があります。
本当に医療費補助が必要な人に、適切な補助が届くように、エビデンスに基づいて制度設計を行うことが期待されます(EBPM: Evidence-based policy making)。