当研究室では、医療現場に蓄積される知見について、臨床疫学研究を通して広く共有することで、診療の質および患者アウトカムの改善に貢献したいと考えています。
今回、当研究室の桂(研究協力員:外科・外傷分野)が主導し、福間が疫学・解析デザインを担当する小児外傷に関する多施設観察研究の患者登録を開始しました。
我々は、以前に沖縄の施設を中心とした10施設から小児の鈍的肝脾損傷に関するデータを集めて解析し、研究報告を行いました(J Ped Surg 2020;55:681-687)。小児の外傷性肝脾損傷に対して、我が国では血管内治療が施行される頻度とフォローアップCTが撮影される頻度が欧米に比して多いことが分かりました。小児においては放射線被ばくの問題等もあり、成人以上にその適応に関しては議論があることが明らかになりました。そこで、小児肝脾損傷に関する研究提案が、日本外傷学会の多施設臨床研究(応募サポート研究)支援事業に採択され、本研究を開始することが出来ました。
http://www.jast-hp.org/syourai/index6.html
これまで時間をかけて日本外傷学会多施設研究委員会にて研究計画について議論を重ね、全国規模の多施設研究を開始するに至りました。現在、参加予定施設が80施設を超え、沖縄で始めた小さな研究から対象患者を全国へ広げて検討することが期待されます。本研究をきっかけに、成人型救命センター、地域の救急病院、こども専門病院など小児外傷に関わる全ての施設が、小児外傷患者のアウトカムを最適化するための全国的な議論に加わっていただけることを期待したいです。