Population-level associations of achievement of targets for bone-mineral markers with survival in haemodialysis patients with mildly elevated intact-PTH levels: a case-cohort study
Shingo Fukuma, Shunichi Fukuhara, Sayaka Shimizu, Tadao Akizawa, Masafumi Fukagawa
Scientific Reports (2019) 9: 11301
論文PDFへのリンク: https://rdcu.be/bM1JS
血液透析患者の診療において、カルシウム、リン、PTHなど骨ミネラル管理は主要な管理目標として重視されています。
本研究では、MBD5D研究(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21426510)のデータを分析し、二次性副甲状腺機能亢進症を有する血液透析患者集団において、骨ミネラル管理が死亡に与えるインパクトを集団寄与危険割合で推定しました。
集団全体がカルシウム、リン、PTHの目標値を達成すれば、16.8%の死亡減少と関連する可能性を示しました。
【疫学コメント】
集団寄与危険割合は、特定のリスク因子が集団全体のアウトカムに影響する程度を示す疫学指標です。集団全体からリスク因子を除去した際に、どれくらいイベントを減らすことができるかどうかを示します。集団寄与危険割合は、リスク因子の頻度、及びリスク因子とアウトカムの関連から計算されます。集団寄与危険割合の結果を解釈する際には、特に以下の3点について注意が必要です。
- リスク因子の定義
集団寄与危険割合はリスク因子の定義に大きく依存します。例えば、今回の研究では、カルシウム目標値を8.4-10.0 mg/dLで定義しています。しかし、上限値を高く設定すれば、リスク因子を持っている人の頻度は減少し、リスク因子とアウトカムの関連も変化する可能性があります。その結果、計算される集団寄与危険割合も変化します。本研究では、感度分析にてリスク因子のカットオフ値を変更した結果を示していますので参照してください。
- 交絡の問題
集団寄与危険割合は、リスク因子を除去する際の効果に因果関係があると仮定しています。これは、すべての疫学研究に当てはまる課題ですが、観察研究で得られた結果には交絡の影響が残存している可能性があります。本研究も、年齢、併存症など基本的な交絡因子については調整を行っていますが、「骨ミネラル管理を達成した際の介入効果」については因果関係を言及することは困難です。集団寄与危険割合の解釈を行う際には交絡の影響について慎重である必要があります。
- パーフェクトな介入の問題
集団寄与危険割合は、集団全体の介入が完全に行われた場合の寄与を推定しています。しかし、現実的にそのような介入は困難です。本研究でも、集団全体の骨ミネラル管理がパーフェクトに行われた際のアウトカム改善を示すことになりますので、臨床的な感覚よりも介入を過大評価する恐れもあります。集団寄与危険割合が何を示している指標なのか理解したうえで解釈することが重要です。